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ラップ名曲パンチラインの意味に学ぶ英語vol.9「Nas編」

アメリカのラップミュージックを聴き始めてもうかれこれ20年くらいになる。

昔のものからわりと最近のものまでいろいろ聴いているが、いまだにストレートで強烈なメッセージやユニークでウィットに富んだリリック(歌詞)を見つける度に1人でニヤリとしたり、何度も頷いたりしている。

このシリーズでは、普段ラップをあまり聞かない人がラップミュージックの魅力に気づいてくれたり、また自分のようにラップのリリックから英語に興味を持ってくれる人がいたら嬉しい、という思いから、ヒップホップ界のレジェンドや、今アツいアーティストたちのリリックの中から、「これはやられたっ!」と思わず唸ってしまうようなエッジが効いてオリジナリティが溢れるパンチラインを紹介していこうと思う。

それじゃ、早速今日のエントリ―を見ていこう―――。

今日の名曲パンチライン

“Life’s a bitch, but God forbid the bitch divorce me. I’ll be flooded with ice, so hell fire can’t scorch me”

-Nas, “Affirmative Action” (1996)

パンチライン徹底解説 

今日のポイント
  • “life is a bitch”というフレーズの意味
  • “be flooded with~”という表現

今日のパンチラインはNYはBrooklyn出身のNasというラッパーの1996年にリリースされたアルバム“It Was Written”に収録されている“Affirmative Action”という曲からの1フレーズです。

今日はこのフレーズを、

  1. “Life’s a bitch”
  2. “but God forbid the bitch divorce me”
  3. “I’ll be flooded with ice”
  4. “so hell fire can’t scorch me”

に区切って徹底的に解説をしていきたいと思います。

“Life’s a bitch”

まず最初のラインですが、こちらは“life is a bitch”という口語表現のフレーズで、ストリート英会話ではしばしば耳にする表現です。

「人生はビッチ」・・・ですか?

“bitch”と聞くと「ヤリ◯ン/あばずれ」などという意味を連想しがちですが、実はその解釈は間違っていて、英語の”bitch”は実は全く違う意味になるのは知らない人も多いと思います。

(”bitch”の本当の意味が気になる方はこちらで解説しているのでチェックしてみてください)

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間違いやすいビッチの本当の意味とbitchを使った面白フレーズ11個 

ここでの”bitch”の意味は「嫌なこと」という感じで、Nasは貧困や争い、犯罪、ドラッグの売買などで溢れているストリートでの生活に対して「人生はクソだ」というような言い方をしています。

CHECK!

“life is a bitch”の意味>

  • 日常会話で使われる「人生はクソだ」という意味のスラングのフレーズ
豆知識

ちなみに、Nas自身の曲で“Life’s a Bitch”という曲もあり(ファーストアルバムの“Illmatic” (1994)に収録)、このラインはその曲に対しての言及の意味も兼ねています。

“but God forbid the bitch divorce me”

次のラインは直訳すると、「しかし神はそのビッチ(クソな人生)からおれを切り離すことを禁じる」となります。

上で見た通り最初のラインでNasは「(ストリートでの)人生はクソだ」と言っていますね。

しかし(”but”)、そのような都会(ここではNew York)のストリートライフというのは、そこで生きる多くの者にとって、一度足を踏み入れてしまったらなかなか抜け出すことができない世界でもあります。

なぜなら、十分な教育を受けておらず雇用の機会などもともとない彼らにとっては、ストリートライフこそが生きる道であり、逆にそこで成功すればいわゆる表世界で働く中流・上流階級の人よりも華やかな暮らしができるからです。

またそのようなライフスタイルをやめることはすなわち、貧困生活に戻る=「死に直結する」ことを意味するので、ストリートで生きる者たちは強盗やドラッグの売買などに手を染めつつ、みな上を目指さざるを得ない運命にあるからです。

そういう負のサイクルが出来上がってしまってるんですね

というようなことを、Nasはここでは「神(“God”)がクソなストリートライフ(“bitch”)からおれを切り離す(“devorce”)のを禁じる(“forbid”)」=「でも運命からは逃れられない」と表現しているんですね。

MEMO

ちなみに“divorce”は「離婚」という意味で覚えている人もいると思いますが、「切り離す」という意味もあるので覚えておきましょう。

“I’ll be flooded with ice”

続いてのラインは直訳で「私はアイスで溢れかえる」という意味になります。

“ice”というのはスラングで「ダイヤモンド」を意味します。なんとなく「氷」から連想できますよね。

そして“flood”は「洪水」で、この“be flooded with~”の形で「~で溢れかえる」という表現になります。

CHECK!

“be flooded with~”

  • 「~で溢れかえる」というお決まりのフレーズ

なのでこのラインは、「おれは溢れるほどのダイヤで囲まれている」という意味になり=ストリートライフで成功を収めたということが想像できます。

“so hell fire can’t scorch me”

そして最後のラインはこのまま、「だから地獄の炎もおれを火傷させることはできない」となります。

この「だから(”so”)」はもちろん前のラインの「ダイヤで溢れている」からの流れですね。

“hell fire”が「地獄の炎」で“scorch”というのが「火傷」ですが、たくさんのアイスに囲まれているので炎も効かないという風に“ice”の一言に「氷」と「ダイヤ」の意味をかけています。

なるほど、上手い言葉遊びですね

まとめ

ということでここまでの全てのラインの意味がわかったので、みんな繋げ合わせてみると、

  1. 「人生はクソだ」
  2. 「でも運命からは逃れられない」
  3. 「おれは溢れるほどのダイヤで囲まれている」
  4. 「だから地獄の炎もおれを火傷させることはできない」

となるので、

“Life’s a bitch, but God forbid the bitch divorce me. I’ll be flooded with ice, so hell fire can’t scorch me”

「人生はクソだが運命からは逃れられない。溢れるほどのダイヤに囲まれて地獄の炎も余裕だぜ」

と訳してみました。

Nasはストリートライフで成功を収めたからこそ余計にそのライフスタイルと縁を切ることができないんですね。

そしてこれは、ストリートのリアルさを上手い言葉遊びと共に短いラインで表現したとてもかっこいいパンチラインです。

この曲はビート自体もかっこよく、またNasだけでなくAZCormegaFoxy Brownという他のラッパーも矢継ぎ早に次々と流れるようなラップを披露していてめちゃくちゃかっこいいのでこちらから聞いてみてください(該当部分は2:23辺りからです)

そしてこの“It Was Written”というアルバムはNasの他のアルバム“Illmatic”“Stillmatic”などと並んでNasの「最高傑作」と言われている作品です。これを機にラップに興味を持ち、僕のように「洋楽から日常で使える表現を学びたい!」と思った人は是非チェックしてみてくださいね。

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はい。ということで、今回の「ラップ名曲パンチラインに学ぶ英語特集」はいかがだったでしょうか?これからも素晴らしきラップミュージックの魅力をお届けすると共に、あなたの英語学習の助けになれれば光栄です。

前のエピソードや次のエピソードも気になる!という方はそれぞれこちらからどうぞ。

<前のエピソード>

ラップ名曲パンチラインの意味に学ぶ英語vol.8「Jay-Z編」

<次のエピソード>

ラップ名曲パンチラインの意味に学ぶ英語vol.10「Redman編」

また、第1回から見てみたい!という方がいましたらこちらからチェックしてみてください。 

それではまた!